ひきこもりと強迫症状

ひきこもりの人のなかには、清潔を保つことが気になったり、ばい菌や感染が心配になることがあります。そのせいで手を洗う時間や入浴時間が長くなる場合もあります。昔から「潔癖症」という言葉がありましたが、精神医学では「強迫症」と呼んでいます。

 

◆ひきこもることで症状が出る場合も

強い不安や恐怖、こだわりがあることで、やりすぎだと思える考えや行動を止められず、日常生活に支障をきたしてしまう「強迫性障害」という病気があります。もともとこの病気を持っていなくてもひきこもり生活が長くなると同じような症状が発生することがあります。

 

◆強迫症状が出るとますます外出しにくくなる

汚れやばい菌が気になってしまうと、ますます外に出るのが怖くなってしまいます。家の中にばい菌を持ち込むわけにはいきませんから、外で着た服や鞄などは家の中に入れたくなくなります。ですから外出する前にやらなければならない支度がたくさん増えてしまって、外に出ることが大儀になってしまいます。

 

◆強迫症状がある場合は強迫症状の治療が先

誰だってやらなければならないことがたくさんあったり、怖いと思う刺激の多いところには行きたくありません。ひきこもりの人だって同じです。「風呂なんて入らなくても大丈夫」「ばい菌なんて怖くないから大丈夫」と言われても不安は解消しません。ひきこもりの問題を解消する前に不安を取り除くことが最優先されます。まずはとらわれてしまったこだわりや不安を和らげるための治療を勧めてください。

 

◆強迫症状とは少し違うこだわりの「ルーチンワーク」

「お風呂に入る前の支度には絶対守らないとならない順番がある」「就寝する前の動作に必ず順番がある」「部屋の中を歩き回る癖がありコースが決まっている」など、生活の中に外せないルーチンワークがある人も外出が面倒になっていると思われます。こういった人たちに将来についての説教をしても相手の心に響きません。役所の精神保健課および障害福祉課や精神科に相談することをお勧めします。

 

◆ひきこもりに精神論は響かない

親の人生観や成功談を聞いて「自分もそうでありたい」と思えた人は世の中にどのくらいいるでしょうか。もしあなたがそのような幸せな経験をお持ちであればなおのこと、そうでない人のことは理解に苦しむかもしれません。少なくとも多くのひきこもりの人は親の話に興味がありませんし、むしろ反感を持たれていることが多いように思います。それに加え、上記のような精神症状があったとしたら、精神論では決して解決しないのです。